女優として歩んでいる大島優子さん。3年ぶり3作品目の舞台に臨む心境を聞きました。
この10月、30歳の誕生日を迎えた。「30歳になってすごく気が楽になりました。20代はつねに戦闘モードで仕事をしていたので、30代は鎧(よろい)からパジャマに着替えるような気持ちでおおらかにやっていきたい」と、茶目っ気たっぷりに語る。
約1年、芝居から離れていたが、今は来年1月に上演されるドストエフスキー原作の舞台『罪と罰』に情熱を傾けている最中だ。大島さんが演じるのは、聖母マリアのごとく慈悲深い心で罪を犯した主人公を包み込む娼婦(しょうふ)・ソーニャ役。「主演の三浦春馬さんとも話し合いながら、いろんなものを受け入れる彼女の心の寛容さを自分なりに表現できたら。あとは、舞台も3回目になるので、もう少し肩の力を抜いて舞台上で遊ぶことを目標にしています」。長い公演に向け、体力づくりのために1カ月前から筋トレも始めたという。
作品については、「自分の物差しでは測ることができない、登場人物それぞれの『正義』に関して考えさせられるお話」と言うが、大島さんにとっての正義とは?
「自分に対しても、人に対しても、物に対しても、誠実でいること。誰だって感情のアップダウンはありますが、下がった状態のときに人や物を雑に扱っている人を見ると、まわりも嫌な気持ちになるし、その人の人間性が透けて見える気がするんです。だからこそ、どんなときも誠実さだけは失わないよう常に心がけています」
舞台というライブで持てる力を発揮するためには、自分のなかのオンとオフを切り替えることも、重要なポイントだ。「オンのときは、気を引き締めて、今、起きていることを目で見て、耳で聞いて、体で感じて捉える。全身のアンテナを立てているような感じです。オフはその逆で、目も耳もシャッターを下ろす。私の場合、オフのスイッチは音楽です。好きな音楽を聴くと自然と体が動き出し、はじけちゃってオフになりませんが(笑)」
文:みやじまなおみ 写真:広田成太
ヘアメイク:犬木愛(Agee)
スタイリスト:百々千晴
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『罪と罰』
頭脳明晰(めいせき)な貧乏青年ラスコリニコフは「正義のためなら法を犯す権利がある」という自分なりの理論を持っており、強欲な質屋の老婆を殺害し、奪った金で善行をしようと企て、誤って偶然居合わせた老婆の妹まで手にかけてしまう。罪の意識、幻覚、自白の衝動に苦しむラスコリニコフを追い詰める国家捜査官ポルフィーリ、聖母のような深い愛で受け止める娼婦ソーニャ、向き合った末に、彼が出した結論とは?
●原作:フョードル・ドストエフスキー
●上演台本・演出:フィリップ・ブリーン
●出演:三浦春馬、大島優子、南沢奈央、松田慎也、山路和弘、立石涼子、勝村政信、麻実れい ほか
東京公演:2019年1月9日(水)~2月1日(金)Bunkamuraシアターコクーン
大阪公演:2019年2月9日(土)~2月17日(日)森ノ宮ピロティホール