『音楽と人 2018年 06 月号』(音楽と人)
8月18日から19日にかけて行われていたSUMMER SONIC 2018にKinki Kids堂本剛によるソロプロジェクト・ENDRECHERIが出演した(18日大阪会場、19日東京会場)。彼が夏フェスに出演するのはこれが初めてとなる。
堂本剛(ENDRECHERI)は、全部で7つあるステージのうち2番目に大きいMOUNTAIN STAGEに出演。約50分ほぼMCなしで演奏し続けたストイックなステージで(最後に<ありがとうございました>と挨拶したのみ)、ツイッター上には<堂本剛さん、完全にファンク無双でめちゃくちゃ感動した。ディアンジェロかよと思った><エンドリケリー、完全にフィールドオブヘヴンで観たい案件>とのコメントも目立ち、色眼鏡で見ていた音楽好きを一発で見返したようだ。
2018年8月20日付ニュースサイト「SANSPO.COM」では、出演の感想を<こういった場所でファンクをやることを欲していたので、新鮮で楽しいステージになりました。音楽に対しての新しい刺激となり、夏のいい思い出ができました>と語り、また、<機会があれば、夜の野外も出てみたい>と、メインステージであるMARINE STAGE出演への希望を語った。
実は、今回のSUMMER SONIC出演は堂本剛にとってリベンジ公演となる。というのも、昨年のSUMMER SONIC 2017(8月19日、20日開催)にも出演が予定されていたのだが、同年6月に診断された左耳の突発性難聴の影響で出演がキャンセルとなってしまっていたからだ。
また、この突発性難聴の影響により、2017年9月1日〜3日に平安神宮で開催予定だったソロ公演も中止になり、イナズマロックフェス2017(9月17日)への出演もキャンセルになっている。ちなみに、平安神宮でのソロ公演も、イナズマロックフェスへの出演も、SUMMER SONIC同様に、これからリベンジ出演することが決まっている(平安神宮は8月31日〜9月2日、イナズマロックフェスは9月24日)。
今年6月にはNHKホールで2年ぶりのソロライブを行うなど、音楽活動をかなり本格化させているが、しかし、耳の病気が完治したわけではない。
NHKホールのライブのMCでは現在の病状について話す場面もあったのだが、そこでは、<ドラム缶の中でガンガン鳴らされているみたいな感じ>(2018年6月8日付ニュースサイト「ORICON NEWS」より)という状況は脱したものの、それでも、<ドラム缶から首は出ている。この辺(首の下)から飛んでくるような感じ>(前掲サイトより)と語り、違和感は現在でも残り続けていると明かしている。
ミュージシャンとしてのキャリアを継続できるぐらいにまでは回復できたが、完治は難しい病気だ。堂本剛は<みなさんが退屈しないように焦りすぎず、少しづつになってしまいますけど、できることを増やしたい>(前掲サイト)と、無理をし過ぎないようにしながら、病気とうまく付き合っていくようだ。
ステージ上では、左耳に綿と耳栓を詰め、そのうえにヘッドホンを装着し、右耳だけで音を聞き取りながら演奏を行っている。これでなんとかライブを行うことができるのだが、それは同時に右耳への負担を重くしていることも意味している。そういう側面を考えると、かなりゆとりをもったスケジュールでライブの予定を組まざるを得ないし、身体のせいで活動の自由が利かないのは歯がゆいものがあるだろう。
だが、堂本剛はこの辛い経験すら表現の糧にしようとしているようだ。「音楽と人」(音楽と人)2018年6月号に掲載されたインタビューで彼は<とりあえずポジティヴに捉えんかったら先に進まへんから>としつつ、耳の病気が自分の音楽を変える、ひとつの機会になるのではないかと語っている。
<今の段階では完治するのは難しい状況で。長い付き合いをしなきゃいけないのは確実なんだよね。それは間違いない。ただそうなると、今後自分が作る音楽も変化せざるを得ないだろうね。でも、これをひとつの機会として、おもしろいファンクを作れたらいいなと思っていて。たとえばメロがあるようなないような曲と、サビだけメロがあるような曲とか。だから、どんどんグルーヴ重視の音楽になっていくと思ってる>
また、前掲「音楽と人」のインタビューで堂本剛は<音楽に昇華したいと思ってる>と、病気すら表現の糧にしてやろうとする強い思いを語っている。
浜崎あゆみ、宮本浩次(エレファントカシマシ)、スガシカオ、SKY-HI(AAA日高光啓)など、耳の病気を抱えながら音楽活動を続けているミュージシャンは他にもいる。どうか無理をしない範囲で、これからもより良い音楽をつくり続けていってほしい。
(倉野尾 実)
https://wezz-y.com/archives/57720/2